研究概要 |
申請者らが開発したニッケル触媒による1,3-ジエンとアルデヒドとの分子内環化反応が含窒素複素環構築に適用可能かを確認すべく、先ず始めにピロリチジン、インドリチジン骨格合成への応用を検討した。(S)-ピログルタミン酸から容易に光学活性体として合成できる(5S)-5-formyl-1-[(2E)-2,4-pentadienyl]-2-pyrrolidinone(1)を基質とし、20mol%のNi(cod)_2、40mol%のPPh_3を触媒として用い、5当量のEt_3SiHをヒドリド源としてtoluene中、室温にて反応を行ったところ、(3R,4R,5S)-1-aza-3-[(E)-1-propenyl]-4-triethylsilyloxybucyclo[3.3.0]-octane-8-one(2)を49%、2のジアステレオマ-の(3S,4S,5S)体(3)を15%の収率で得た。2、3を対応するbenzoateへと導きHPLCにてその鏡像異性体過剰率を求めたところ、それぞれ97% ee、96% eeを示し、本閉環反応において基質の光学純度を保持して反応が進行していることがわかった。また、ヒドリド源としてPh_3SiHを用いたところ閉環反応の立体選択性は向上し、2が73%、3が8%の収率で得られた。次にインドリチジン骨格の合成への応用を検討した。基質として(5S)-5-(1,3-butadienyl)-1-(3-formylethyl)-2-pyrrolidinone(4)を用い、同様の条件下反応を行ったところ(7R,8S,8aS)1-8-[(E)-1-propenyl]-7- triethylsilyloxyindolizidin-3-one(5)を40%、5のジアステレオマ-の(7S,8S,8aS)体(6)を38%の収率で得た。4を一炭素増炭した(5S)-1-(2-formylethyl)-5-(1,3-pentadienyl)-2-pyrrolizidinone (7)を基質とした反応では、(7R,8S,8aS)-8-[(E)-1-butenyl]-7-triethylsilyloxyindolizidin-3-one(8)及び(7S,8S,8aS)体(9)をそれぞれ36%、37%の収率で与えた。9は光延反応により8へと収率良く変換でき、8からインドリチジンアルカロイドの一種、(-)-Elaeokanine Cの形式的全合成に成功した。本結果から申請者らは天然型の(-)-Elaeokanine Cを合成できる経路を初めて開発できたことになる。これらの成果を基に現在、最終目的である動的速度論的分割によるピロリチジン及びインドリチジン骨格の触媒的不斉合成を検討中である。
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