研究概要 |
新規キラル超原子価ヨウ素試薬の合成を目指して、今年度は研究実施計画に基づき、環構造に不斉を導入した新規環状超原子価ヨウ素試薬の合成研究を行った。その結果、現在のところラセミ体ではあるが、非対称環状ヨウ素試薬を合成し、他の環状試薬と同程度の反応性を有することが分かった。また、環状試薬も含めた超原子価ヨウ素試薬の活性化法の開発についても検討した。超原子価ヨウ素試薬の活性化に関しては不活性なヨードソベンゼンをBF_3・Et_2Oで活性化する以外はほとんど知られていなかった。そこで申請者は活性なphenyliodine (III) bis (trifluoroacetate)(PIFA)と種々のルイス酸との組み合わせによりいかなる効果が発現するかを調べた。その結果、フェノールエーテル類の分子内フェノールカップリング反応においてPIFA-BF_3・Et_2Oの使用により著しく収率が向上した他、(J.Org.Chem.,1996,61,5857 ; Chem.Commun.,1996,1481.) PIFA-BF_3・Et_2Oとベンジルチオアルキル側鎖を有するフェノールエーテル類との反応により含硫黄複素環化合物類を高収率で得ることに成功した。(Chem.Commun.,1996,2225.)また、TMSOTfで活性化させたPIFAを用いた場合にもアルキルアジド側鎖を有するフェノールエーテル類の分子内閉環により合成化学上有用なキノンイミン類及びキノンイミンモノアセタール類を短工程かつ収率良く得ることが出来た。(Chem.Commun.,1996,1491.)このようにルイス酸の添加により従来にない高い反応性と特異な反応性(特に1電子酸化反応)を発現させることができたので、現在、これらの知見に基づき、光学活性リガンドの合成並びにキラルなルイス酸による触媒的な活性化などによる新規な不斉酸化反応を検討中である。
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