研究概要 |
ラット白血病好塩基球培養細胞(RBL-2H3細胞)を用いた抗ヒスタミン遊離抑制活性試験(活性試験)を指標として、広島市内で採集したオランダハッカ(Mentha spicata var crispa)のヒスタミン遊離抑制活性物質の検索を行い、以下に述べるような新たな知見を得た。 以前行った一次スクリーニングで活性の認められたオランダハッカの地上部のメタノール抽出物を、ヘキサン、酢酸エチル、ブタノールで順次分配したところ、活性は酢酸エチル移行部に濃縮された。そこで、この酢酸エチル移行部を、活性試験の結果を指標として順相あるいは逆相のシリカヘルカラムクロマトグラフィーにて分画し、最終的に高速液体クロマトグラフィーで精製し、3種の活性化合物の単離に成功した。これらの化合物の構造を、質量分析や核磁気共鳴などの各種スペクトルデータ、化学反応などによりその構造を明らかにした。活性化合物のうち2種は、高度にメチル化されたフラボノイドで、それぞれ7,8,3',4',-O-methyl-5,6,7,8,3',4',-hydroxylflavoneおよびsideritiflavoneと同定した。これらの化合物は既に本植物と同属の植物から単離報告されていたが、これらの化合物にヒスタミン遊離抑制活性があることは知られていなかった。一方、残る1種の化合物は、Matsutakealcohol glucosideであることが機器分析結果より明らかとなった。この化合物のアグリコン部は、Matsutakealcoholの名が示すようにマツタケから既に得られているが、配糖体としては初めての単離である。ある種のフラボノイドにヒスタミン遊離抑制活性があることは知られているが、今回同時に単離した他の3種のメチル化フラボンには活性が認められず、活性発現には、B環部のカテコール構造が必須であることが判明した。また、Matsutakealcohol glucosideは、脂肪族配糖体として初めて本活性の認められた化合物であるが、アグリコンであるMatsutakealcoholには活性が認められず、配糖体変化によって初めて活性が発現していることが示された。以上の知見は、今後抗アレルギー作用薬の開発を進める上で重要であると考える。
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