研究概要 |
σ対称分子であるケトマロン酸ジエチルとプロピオル酸ジアニオンとの反応によりエチニル体を合成し、酵素認識部位として常法により別途合成したL-lle-L-Pro-OHあるいはL-lle-L-Pro-OBu′、L-Phe-NHBzlをアミド結合を介して導入した。次いで、含水エタノール水中1NKOHを用いる塩基性条件下に分子内環化させ、3-プロリン-2-オン誘導体へと変換することに成功した。3-ピロリン-2-オン環の5位に生じた新たな不斉炭素原子に由来するジアステレオ異性体は分離精製し、X線結晶解析の結果と化学変換による各誘導体間の構造の相関を基盤とし、それらの絶対配置を決定した。さらに、酵素阻害活性発現の機構解明のため、3-ピロリン-2-オン環のピロリジン環への還元、5位エチルエステルのベンジルアミドへの変換、5位水酸基のフッ素原子への変換、5位水素基のMOM化あるいはTES化等を実施した。また、3-プロリン-2-オン環をマレイミドやコハク酸イミド、フタルイミド、1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドに置換した化合物も合成した。 合成したすべてのカテプシン類阻害剤候補化合物について、カテプシンBおよびLの酵素加水分解反応に対する阻害活性を測定したところ、酵素認識部位としてL-lle-L-Pro-OHを有する5S-3-ピロリン-2-オン誘導体はカテプシンBに対して1×10^<-7>Mで91%という阻害活性を示した。さらに、カテプシンLに対しては1×10^<-5>Mにおいても全く阻害活性を示さなかったことから、本化合物はカテプシンBに対する特異的阻害剤として有望な候補化合物であることが明らかとなった。
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