研究概要 |
スパロソマイシンA_1,A_2は、放線菌由来の二次代謝産物でsrc^<ts>-NRK細胞の細胞周期をG1期で停止させることで癌細胞形態から正常細胞形態へと復帰させる活性を有している。タンパク合成阻害に関与するとされるp60V-srcキナーゼとは、異なるタンパクとの関与が示唆されることから新しいタイプの細胞機能調節物質となる可能性を秘めた化合物である。 本研究は、生理活性機構解明に向けて、スパロキソマイシンA_1、A_2および酸化度の低い類似体のスパルソマイシンを立体かつ位置選択的に合成することを目的とした。活性発現には硫黄元素上の立体化学が大きな影響を与えると予想され、ジチオアセタール部分の不斉酸化を機軸とする合成法の開発を試みた。 D-システインを出発原料に、S-メチル-D-システノール誘導体を合成し、これらを基質とした不斉酸化を種々検討した。その結果、R-ビナフトールを不斉配位子に、スルフィド/R-ビナフトール/Ti(O-i-Pr)_4/H_2O/TBHP_<aq>=1.0/0.2/0.1/2.0/2.0の条件で不斉酸化を行なうことにより、収率68%、86%e.eで目的とする立体配置を有するS-メチル-D-システノール-S-オキサイドを得ることができた。このものは一度再結晶することで100%e.eの純品が得られた。これをモノオキソジチオアセタールへと導き、DCC法でβ-(6-メチルウラシル)アクリル酸とカップリングした後、脱保護を行いまずスパルソマイシンの合成を完了した。15EA04:今後、スパルソマイシンの異性体の合成とスパロキソマイシンA1,A2の全合成および立体異性体の合成を行い、スルホキシド部分の活性発現に於ける立体化学的な役割を明らかにする予定である。より活性の高い誘導体さらに、新しいタイプの制癌剤の開発へと研究が発展することが期待される。
|