研究概要 |
(+)-アイコトリン及び(+)-O-メチルサイコトリンは3ヵ所の不斉中心を有するベンゾキノリジジンアルカロイドであり,HIV-2RTに対して極めて強い阻害活性を有することがPezzutoらにより明らかにされた.申請者は本化合物のキラル全合成を目指して本研究に着手し,イソキノリン骨格1位への立体選択的アルキル基導入反応及びラジカル閉環反応を検討した.その結果,1位への選択的アルキル基導入反応はGrignard試薬及びジエチルアルミニウムクロリドの組み合わせにより高い選択性で立体制御を達成し,また本法は広汎な適用が可能であることを明らかにした. 一方ラジカル閉環反応は,当初ヨウ化サマリウム(II)により達成されるものと考え,本全合成研究計画を立案したが,Sm(II)の還元能力がN-N結合を開裂するに至らず別途合成ルートへの変更を余儀なくされた. 現在,標的化合物合成研究と併せて,N-N結合開裂反応が新たな研究課題となりうると考え,この点を検討中である.
|