研究概要 |
ラクタシスチンの基本骨格である5,5-二置換ピロリドン骨格の合成を検討した。1,2-trans-1-フェニル-2-ニトロー4-シクロヘキセン(1)のニトロ基を亜鉛還元した後、t-ブトキシカルボニル(BOC)基で保護し、アミノ体を合成した。このものを触媒量を三塩化ルテニウムとメタ過ヨウ素酸ナトリウム(四酸化ルテニウム)で酸化すると2,3-cis-3-フェニルピロリジン-5-オン-2-酢酸が高収率で得られた。そこで1をイソプロパノール中水酸化ナトリウム存在下ホルマリン水溶液と処理するとニトロアルドール反応が進行し、1-フェニル-2-ヒドロキシメチル-2-ニトロー4-シクロヘキセンが約2:1の立体異性体の混合物として87%で得られた。両異性体を分離後、主生成物を無水酢酸-ピリジンと反応させて水酸基をアセチル化した。このものを先と同様に亜鉛還元し、BOC化を試みたが分解生成物が得られるのみで目的のアミノ体は全く得られなかった。現在還元条件を種々検討中である。 また,別法として市販の(S)-3-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチルを用い、その水酸基をベンジル化し、エステル基をアルデヒドに還元した。ベンジルヒドロキシルアミンと縮合させて対応するキラルなニトロンを合成した。得られたニトロンとニトロエテンとの不斉1,3-双極子付加反応を検討したところ、付加反応は収率よく進行するもののジアステレオ選択性はほとんど観測されなかった。1級水酸基の保護基をベンジル基からシリル基に変更したり、ニトロンの窒素上にキラルな置換基を導入して同様の反応を試みたが選択性はほとんどみられなかった。現在本反応を分子内反応にしてその立体選択性を検討中である。得られるイソキサゾリジン環を開環-再閉環してピロリドン環を構築する予定である。
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