研究概要 |
インドネシア・フローレス島で採集したミカン科植物Aegle marmelos乾燥樹皮のメタノール抽出エキスを、繰り返しシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製を行ったところ、2種新規クマリン類とともに、2種の新規化合物を含む4種のテトラリン型リグナン配糖体を単離した。この4種のリグナン配糖体はいずれも分子組成はC_<28>O_<38>O_<13>であり、^1H-および^<13>C-NMRスペクトルの解析により、これら4種の化合物はテトラリン型リグナン骨格に、6炭糖が結合した化学構造を有することが推測され、さらに種々の二次元NMRスペクトルの解析により、全く同じ平面構造を有する3種の化合物と、糖の結合位置が異なる1種の化合物であることが判明した。さらに、それぞれの化合物についてメタノリシスを行うことにより、いずれの化合物の糖もD-グルコースであることが明らかになった。また、得られたアグリコンは既知テトラリン型リグナン(+)-,及び(-)-lyoniresinolともう1種、B環アルキル置換基の立体配置が異なる新規リグナンであることが判明した。これらB環置換基の相対配置は^1H-NMRスペクトルの結合定数の解析、及びNOESYスペクトルの解析により明らかになるとともに、B環4位のフェニル基の絶対配置をCDスペクトルの解析により決定し、全化学構造を決定した。 同一植物からテトラリン型リグナン骨格B環のアルキル置換基に関する立体異性体3種をアグリコンとする配糖体が単離された報告はなく、また、その中の1種のリグナンが、抗腫瘍活性を示すテトラリン型リグナンpodophyllotoxinと同じB環アルキル置換基の立体配置を有していることから、B環置換基の立体化学も持つ意味の解明に興味がもたれる。
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