研究概要 |
合成抗酸化剤に発癌等の副作用が危惧されていること,ならびに活性酸素種の生体への障害と種々の疾病との関係が明らかにされてきていることから,薬草および野菜等の天然素材を起源とする抗酸化物質の探索を企図し,ロダン鉄法によるMeOHエキスの抗酸化スクリーニングにおいて強い活性を示した蔓荊子(Vitex rotundifoliaの種子),人参(Daucus carota)地上部およびペル-産生薬のマティコ(Piper elongatum)地上部とパジャロボボ(Tessaria integriforia)全草のエキス中の活性成分の単離,構造解明を行った.また,アレルギー性疾患の原因の一つとして活性酸素種の関与が知られていることから,これまでにウイキョウ(Foeniculum vulgare)果実から得た抗酸化物質について抗I型アレルギー活性の指標の一つとされるヒアルロニダーゼ活性阻害試験を実施した. 各MeOHエキスを各種カラムクロマトで,分離,精製し,蔓荊子から14種,人参から1種,マティコ地上部から11種,ならびにパジャロボボ全草から12種の化合物を単離し,それらの構造を各種機器スペクトルならびに化学反応により決定した.また,それらの化合物のうち20種についてロダン鉄法を実施し,蔓荊子の4種,人参の1種,マティコ地上部の8種およびパジャロボボ全草の3種に合成抗酸化剤のBHAよりも強い活性を見出した.さらに,ウイキョウ果実からこれまで得た6種のオリゴスチルベン類について,ヒアルロニダーゼ活性阻害試験を行い,2種に市販の抗アレルギー剤のDSCGと同程度の活性阻害効果を確認した。 今後,さらに上記各エキス中の抗酸化成分の研究を進めると共に,強い抗酸化活性を示した化合物のヒアルロニダーゼ活性阻害試験を行い,活性酸素の消去を作用機序とする抗アレルギー物質の探索を行う.
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