正電荷リポソームのラット静脈投与後の体内動態および肝潅流法を用いた取り込み実験における正電荷密度の影響を検討し、以下の知見を得た. 1、カチオン性リボソームはその表面の正電荷密度によって体内挙動が大きく異なり、塩基性脂質の種類によらず、ある正電荷密度を持つカチオン性リポソームは肝臓の取り込みを回避し、血中耐留性が向上する。それ以上の電荷を持つ場合は、逆に肝臓へ取り込まれやすくなる。 2、肝潅流法による実験より、肝臓の収り込みは緩衝液中では正電荷の強いものほど取り込みが大きく、肝細胞との静電的相互作用がその取り込みの引き金になっていることが明らかとなった。また、赤血球存在下での取り込みは、体内挙動と同様に、ある正電荷密度を持つカチオン性リポソームのみ肝臓の取り込みが大きく減少した。したがって、カチオン性リポソームは肝細胞と赤血球との静電的相互作用のバランスによってその体内挙動が決定されていることが明らかとなった。 3.肝臓の取り込みを回避するカチオン性リポ-ムの赤血球への結合は弱いため、結合という考え方ではうまく説明できない。カチオン性リポソーム存在下での赤血球のゼータ電位は大きく上昇したことから、カチオン性リポソームは赤血球の周りをイオン雰囲気の様に取り囲む形で相互作用していると考えられる。リポソームの正電荷の強い場合、赤血球の負電荷がシールドされてしまうために、肝細胞との強い静電的相互作用により速やかに肝臓へ取り込まれると考えられる。
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