研究概要 |
平成8年度において,研究代表者はRNA酵素(リボザイム)の高活性化に関する研究を行ない,以下のような結果が得られたので報告する.まず,新規RNA酵素を構築するため,既存のRNA酵素の一つであるウイルスのサテライトRNA由来のヘアピン型リボザイムの構造活性相関について調べ,その結果を参考にして,新規リボザイムを構築した. 1.2つのドメインよりなるヘアピン型リボザイムを,それぞれのドメインに分割して切断反応を行なった結果,2つのドメインを完全に分割してもRNAの切断反応を生じることを明らかにした. 2.天然型ではドメイン間の相互作用が固定化されておらず,NMRやX線結晶構造解析には不適切であった.そこでドメイン間の相互作用を固定化させ,常に活性なコンフォメーションを取りうるような新しいヘアピン型リボザイムを構築することに成功した. 3.以上の研究結果より,このヘアピン型リボザイムの活性なコンフォメーションが,2つのドメインの相互作用したベント構造であることが明らかになった.この結果をもとに,活性なコンフォメーションをとりやすくした新しい三叉路型ヘアピン型リボザイムを構築した.標的には,まだ誰も選択していないヒト誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)のmRNAを選択した.この新しいリボザイムは,標的RNAとより多くの塩基対を形成し,その基質一酵素複合体が天然型よりも活性なコンフォメーションをとりやすくなっている.この新型ヘアピン型リボザイムは,天然型の3倍近い活性を示すようになった. 以上のように平成8年度奨励研究(A)において,天然型リボザイムの高次構造を明らかにし,さらに新しいリボザイムを構築することができた.
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