研究概要 |
本研究の代表者は,PCNAが関与するDNA修復の分子機構の解明を目的として,無細胞ヌクレオチド除去修復系によるin vitroでのDNA損傷修復反応を各種ヒトPCNA変換体を用いて行うことにより,(1)PCNAがDNA損傷の除去修復因子と相互作用する部位の解析,ならびに(2)PCNAと相互作用するDNA修復因子を探索するための実験系の構築を試みた.以下に,今年度得られた新たな知見等の成果を示す. 1.Richard D.Woodらにより報告されている方法に従って,HeLa3S細胞の核抽出液をphosphocelluloseカラムクロマトグラフィー,続いてDEAE-Biogelカラムクロマトグラフィーにより分画し,細胞由来のPCNAおよび1本鎖DNA結合蛋白質(HSSB)を含まないフラクション(CFII)とHSSBのみを含むフラクション(CFIA)を調製した. 2.紫外線照射により損傷を受けたプラスミドDNAを鋳型として,上記CFIIおよびCFIAフラクションに,既に大腸菌のシステムにより発現,精製された組換え型PCNAを加えて,in vitroでのDNA損傷の修復反応を行った. 3.シクロブタン型チミンダイマーあるいは(6-4)光産物を含む合成オリゴヌクレオチドと適当な配列および鎖長のオリゴヌクレオチドをT4DNAリガーゼを用いて結合させ,紫外線損傷塩基をその中央部に1ケ所だけ有する67b.p.の2本鎖DNAフラグメントを作製した. 現在,2.の実験において,損傷DNA修復活性の向上を目指して,条件検討を繰り返し行っている.
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