研究概要 |
クラスCβ-ラクタマーゼのα8-α9間ループ構造へのアミノ酸挿入変異によるオキシイミノ系β-ラクタム剤への基質特異性拡張の要因を調べるために以下の2テーマで変異β-ラクタマーゼを作成し、解析を行なった。 アミノ酸挿入数変化:210位Arg以後にAlaを1から4残基までそれぞれ挿入したAVRA,AVRAA,AVRAAA,AVRAAAAの配列を持つ変異酵素を作成した。精製酵素の酵素化学的解析より、挿入Ala数の上昇とともに段階的なオキシイミノ系β-ラクタム剤分解のκcatとKm値の上昇が観察さた。アズトレオナム分解反応中間体として2種類の不活化体が観察され、より安定性の高い不活化体の割合はκcat値の上昇に伴い低下した。 アミノ酸挿入位置変化:α8-α9間は約50残基からなる長いループ領域である。GC1β-ラクタマーゼでの3アミノ酸挿入位置を含む5箇所にAla-Ala-Ala挿入を導入した変異遺伝子をそれぞれ作成した。GC1β-ラクタマーゼの変異部位と異なる位置へAla-Ala-Alaを挿入した変異遺伝子導入大腸菌でもオキシイミノ系β-ラクタム剤への基質特異性拡張が観察された。 以上の結果からα8-9間ループ上の挿入変異はオキシイミノ系β-ラクタム剤を基質としたときのアシル中間体のコンフォメーションに影響を及ぼし、その安定性を低下させ分解活性を上昇させることが明らかとなった。またその範囲もGC1β-ラクタマーゼで報告した位置以外にα8-9間ループの広範囲にわたっており、α8-9間ループはアミノ酸置換のみならず挿入変異においても基質特異性拡張変異のホットスポットであることが明らかとなった。
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