研究概要 |
本研究では、朝鮮人参毛状根(Panax ginseng)からトリテルペノイド生合成に関与するスクアレンエポキシダーゼ(SQE)とスクアレン合成酵素(SQS)のcDNAクローニングを行った。 まず、毛状根からmRNAを調製し、ラット、酵母のSQEにおいて極めて相同性の高い2つのアミノ酸配列(PDRILGE,TGGGMTV)に基づくプライマーを合成し、RT-PCRを行ったが、予想される位置にバンドが検出されなかった。そして、次に人参λZapII cDNAラィブラリーより、Arabidopsis由来のESTクローン(129F12T7)をプローブとして、スクリーニングを行い、独立した約65万クローンから、1個の陽性クローン(pPGSE-1)を単離した。塩基配列の結果、pPGSE-1は全長1846bpで470アミノ酸残基からなる分子量51,710のポリペプチドをコードしていることが示された。また、pPGSE-1はラット、酵母のSQEとアミノ酸レベルでそれぞれ42%,37%の相同性を示し、補酵素FADの結合領域及び先の実験で用いた2つのアミノ酸領域もよく保存されていた。なお、植物界においてSQE遺伝子が単離されたのは、本クローンが最初である。 また、同ライブラリーからArabidopsis由来のpATSS-4(SQScDNAを含む)をプローブとして、2個の陽性クローン(pPGSS-1,pPGSS-2)を単離した。pPGSS-1は1518bpのインサートcDNAを有し、415アミノ酸残基からなる分子量47,123のポリペプチドをコードしていることが示され、他の植物(甘草、タバコ)のSQSと比較して、アミノ酸レベル約80%の高い相同性を示した。また、pPGSS-2はN末端のアミノ酸領域が欠失したクローンであり、pPGSS-1との比較により人参には少なくとも2種類のSQSが存在することが明らかとなった。 現在、単離したpPGSE-1及びpPGSS-1の酵母での発現解析を利用して、酵素活性触媒に必須なDNA領域の決定を遂行している。
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