研究概要 |
近年,プロモーター領域における特異的なヌクレオソームの形成と破壊(排除)は,真核生物の遺伝子発現制御機構において重要なステップであると考えられている.我々は,出芽酵母のα2repressorによってポジショニングしたヌクレオソームを含むミニ染色体を用いて,テストDNA配列のヌクレオソーム形成をin vivoで評価できる系を確立した.この系を用いて.分子内三重鎖,cruciform,左巻Z-DNAなどのnon-B型DNA配列が,in vivoでのヌクレオソーム形成に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.そこで,特殊はDNA配列によるヌクレオソーム排除の機構を明らかにするために,d(A)_n・d(T)_nならびにZ-DNA配列に焦点を絞り,そのクロマチン構造を解析した.(A)_n配列が長くなると、その領域近傍からヌクレオソームは排除された.しかし,A/Tに富む出芽酵母のARS(自律複製配列)共通配列の11bpだけでは,ヌクレオソームは排除されなかった.一方、(CG)_nはヌクレオソームを排除したが、(CA)_nはヌクレオソームの形成には大きな影響を及ぼさなかった.これは,(CG)_nが(CA)_nよりもZ-DNAを形成しやすいことに起因すると考えられる.以上の結果は、DNAの高次構造が、染色体構築のシグナルとして機能している可能性を示している. 現在,in vivoでのnon-B型DNA構造を検出するために,酵母の単離核またはspheroplastにOsO_4を作用させるin situケミカルプローブ法について検討している.さらに,レポーター遺伝子を用いて,ヌクレオソーム排除と転写活性との関係をin vivoで解析している.また,この系を筋神経疾患由来トリプレットリピートに適用して,発症の原因であるトリプレットリピートの伸長とクロマチン構造との関係について研究を着手した.
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