研究概要 |
ウシ副腎におけるアルドステロンは,11-デオキシコルチコステロンから単一CYP分子(CYP11B)による見かけ上異なる三段階の連続反応を受け生合成されているが,特に最終段階のみがNADPHの他にNADHおよびアスコルビン酸塩添加により飛躍的に促進されることが明かにされている.この結果から,既知の電子伝達系とは別に,bタイプチトクロム(Cyt.b)およびSemidehydroascorbate Reductase(SDAR)が特異的な電子伝達成分として関与している可能性が示唆されている.ミトコンドリア外膜由来OMM-Cyt.bはAkio Itoによってラット肝臓より精製され,その抗体がSDAR活性を特異的に阻害することから,両者に関連性があることが予想されている.本研究ではウシ副腎アルドステロン生合成調節機構を明らかにすることを目的として,ミトコンドリア膜よりSDARの可溶化とその精製を試みた.はじめにウシ副腎100個から髄質部分を取り除き,ミトコンドリア画分を常法により調製した.SDAR活性は,これまで報告されている方法に改良を加え,基質としてデヒドロアスコルビン酸を用いることにより安定した測定が可能となった.次に,低張液中でミトコンドリアを破壊した後,各種,各濃度のDetergentを用いて可溶化の条件を検討し,2%TritonX-100により最も効率よくSDARが可溶化されることが明らかとなった.現在のところまだその精製法は完成するに至っていないが,可溶化液をDEAE-Cellulose,HydroxyapatiteさらにAF-Blueトヨパールカラム処理することによりSDS-PAGEゲル上,ほぼ単一バンドにまで精製可能となった.また,推定分子量は約50Kdであった.今後,SDARの更なる精製法の確立とCyt.bとの関連性について,またCYP11Bや,別途に精製を進めているアドレノドキシンおよびアドレノドキシン還元酵素等との再構成実験により,アルドステロン生合成調節へのアスコルビン酸等の関与について研究を進めていく予定でいる.
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