研究課題/領域番号 |
08772129
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
榎本 秀一 理化学研究所, 核化学研究室, 基礎科学特別研究員 (10271553)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 生体微量元素 / マルチトレーサー / メタロチオネイン / 血漿蛋白質 / 受容機構 / 代謝過程 |
研究概要 |
本研究では、微量元素の生体内に取り込まれる初期過程に介在する輸送蛋白質(血漿蛋白質、金属蛋白質)の重要性とそれらの蛋白質から組織細胞に取り込まれる際の受容過程に注目し、血漿蛋白質であるアルブミン、グロブリン、トランスフェリン、フェリチンおよび金属蛋白質であるメタロチオネインについて、これら蛋白質と各種微量元素の相互作用と輸送、受容のメカニズムを検討した。本研究では、以下のことが明らかになった。 (1)in vitroにおける微量元素と蛋白質の結合活性の測定にマルチトレーサー法を適用し、25種類の元素の結合活性を同時解析した。各種血漿蛋白質に対する様々な元素の結合は、それぞれの蛋白質固有の結合特性を示した。すなわち、アルブミンならびにグロブリンの各種元素との結合のpH依存性は、類似の挙動を示し、pH6.8付近において、Znの結合活性が極大を示した。一方、Srなどのアルカリ土類元素は、これら蛋白質と結合せず、錯体を形成できないことがわかった。鉄輸送蛋白質であるトランスフェリンは、上記2つの蛋白質と異なり、希土類元素やMnなどに酸性側のpHにおいて、高い結合活性がみられ、pH上昇により結合活性が低下した。 (2)(1)の実験をふまえ、初代培養系細胞である肝臓細胞群の各種微量元素取り込み機構について検討した。トランスフェリンレセプターを多く発現した肝臓細胞(肝癌細胞)は、希土類元素を特異的に濃縮し、通常、骨に蓄積性の高いV、Sr、Scなどの元素も蓄積することがわかった。肝障害モデル動物は、その障害部位にトランスフェリンレセプターの発現が多いが、肝臓癌モデルラット、アルコール性肝障害惹起マウスのマルチトレーサー法による代謝実験においても同様な結果が得られ、病理学的観察から、肝細胞のうち、繊維化した細胞群がこれらの元素を特異的に濃縮していることが明らかになった。 (3)ラットにZnを与え、金属蛋白質であるメタロチオネインを誘導し、HPLCによりメタロチオネイン1と2を精製した。この精製メタロチオネインを用い、マルチトレーサー法を用い、メタロチオネインと各種元素のin vitro結合実験を行った。この結果、メタロチオネインは、Zn、Y、Eu、Lu、Ru、Pt、Se、Mnに対して高い結合活性を示した。本実験におけるSeはSeO_3の状態で存在しており、この化学形においてメタロチオネインとの結合のメカニズムの説明が必要であり、現在、詳細な検討を行っている。 (4)マルチトレーサー法をメタロチオネイン遺伝子をノックアウトしたマウスに適用すべく、代謝実験を現在行っている。現在までのところ、ノックアウトマウスの腎機能の低下が、代謝過程に影響していることが明らかになったが、当初の予想通り、Zn、Se、Mn、希土類元素の挙動に特異的変化が観察された。
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