研究概要 |
1)ヘアレスマウス皮膚透過性 ヘアレスマウス摘出皮膚を用いて,アンチセンスDNAの皮膚移行性におよぼすリポソームの表面電荷の影響を検討したところ,アンチセンスDNA単独では全く皮膚への浸透がみられなかったのに対し,リポソームに封入することにより増大し,特に正電荷リポソームにおいてその効果は顕著であった.また,正電荷リポソームはアンチセンスDNAの皮膚滞溜性を増大することが明らかとなった.したがって,正電荷リポソームはアンチセンスDNAの経皮デリバリー用キャリアーとして優れていることが明らかとなった. 2)細胞内取り込みおよびアンチセンス効果 最近,アトピー性皮膚炎患者の炎症部位ではTh2系が優位であり,その要因として炎症部位における単球細胞からのIL-10の過剰産生が関与していると報告されている.そこで,培養細胞としてマクロファージ様株化細胞RAW264.7を用いて以下の検討を行った.細胞へのアンチセンスDNAの取り込みは,皮膚移行性と同様に,アンチセンスDNA単独では僅かであったのに対し,正荷電のリポソームにおいて約10倍増大した.また,細胞をLPSで刺激後のIL-10産生におよぼすアンチセンスDNAの影響を検討したところ,IL-10mRNAの3′非翻訳領域に対するものが濃度依存的,配列依存的に顕著に抑制した.しかし,アンチセンスDNAを封入したリポソームではアンチセンス効果の増強は見いだされなかった.今後,アンチセンスDNAとリポソームの配合比率など実験条件を変えてアンチセンス効果におよぼす影響について検討を加えて行く予定である.また,リポソーム封入体がアンチセンスDNAの細胞取り込みを著しく増大するにもかかわらず,効果の増強を示さない要因として,細胞取り込み後,ライソゾーム系へ移行し,ほとんどのアンチセンスDNAがターゲットへ結合する前に,分解している可能性も考えられる.そのため,細胞質内へアンチセンスDNAを直接移行させうるような他のキャリアー等についても今後検討を加えて行く予定である.
|