本研究の目的は、医療機能評価の指標として患者満足度を導入することの可能性、問題点について検討することである。4病院(慢性期型2病院、急性期型2病院)の入院患者877人、外来患者849人を対象にアンケート調査を行った。回収率は入院患者39%、退院患者52%であった。平均年齢は入院患者67.6歳、外来患者58.3歳であり、性別では男性は入院患者で52.6%、外来患者で63.4%であった。職業別では主婦・無職の割合は、入院患者で63.4%、外来患者で51.6%であった。以上の外来患者に比較して、入院患者では、平均年齢が高く、女性の割合が多く、主婦・無職の割合が高いという患者属性は4病院にほぼ共通して見られた。受診内容、受診動機からは、入院患者では、ア)内科、イ)整形外科、ウ)リハビリテーションの順で、外来患者では、ア)内科、イ)整形外科、ウ)外科の順で患者数が多く見られた。受診動機は、入院患者では、ア)通うのに便利、イ)医師の紹介、ウ)医師以外の紹介、の順であり、外来患者では、ア)通うのに便利、イ)医師以外の紹介、ウ)評判がよい、の順であった。外来患者においては、利便性と、いわゆる口コミが大きな受診動機になっているのに対して、退院患者では利便性の相対的比重は低くなり、医療職・非医療職を問わず紹介が多くを占めていることが示唆された。自由記載欄には、どのような点について患者サービスの改善が望ましいかを記載していただいた。また、個々のサービスについての患者よりの評価と(財)日本医療機能評価機構の評価指標に基づく評価結果についての関係について検討した。上記の検討からは以下の事柄が示唆された。すなわち、 1.外来患者においては利便性、口コミなど医療以外の要素が大きな受診動機になっており、入院患者においては医療関係者であるか否かを問わず紹介が多くを占めていた。これは患者構造から当該医療機関の地域における役割を明らかにするためには、外来患者よりもむしろ入院患者の疾患・治療内容を指標にする方が望ましく、とりわけ被紹介患者の疾患・治療内容が有用であることを示唆している。 2.患者の出入りの多くパブリックスペース、病室については構造面についての患者による評価と、(財)日本医療機能評価機構の評価指標を用いた評価結果はよく相関していた。しかしながら、技術面、安全面については、患者からの指摘は比較的乏しく、相関は一般に認められなかった。また1病院においては改築工事中に入院した患者の回答では工事についての不満が集中していた。一般に、騒乱因子のない状況下におるパブリックスペース、病室などの患者による評価は極めて信頼性が高いものと思われる。騒乱因子としての一時的な現象(工事など)存在下での評価結果の使用については慎重に行う必要がある 3.職員の応対などソフト面についての評価は、外来患者に比較して入院患者で低い傾向が見られた。入院患者では感受性が昂進している状況が推察された。また個別の応対が病院全体の評価に大きく影響する傾向が見られた。 上記検討結果は更に確認が必要であるが、地域における医療機関の役割を明確にする上での入院患者、被紹介患者の患者構造分析の有用性、分野によっては患者による評価結果の信頼性が比較的高いことを示唆していると思われる。
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