昨年度、私はNG108-15細胞(neuroblastomaとgliomaの雑種)において、細胞外ATPはP_<2Z>受容体を刺激し、非選択性陽イオン電流を発生させることを見い出した。今年度、私はこの電流が、細胞外の陰イオンによって影響されることを見い出した。即ち、細胞外液のCl^-をアスパラギン酸、メタンスルホン酸やF^-で置換すると、ATP誘発電流はCl^-液中より大きく発生した。しかし、Br^-やI^-液中ではATP誘発電流は、Cl^-液中より抑制された。また、ATPはいずれの溶液中においても用量依存的に電流を増大させた。得られた用量反応曲線のEC_<50>値や最大反応値は、さまざまであった。細胞内Ca^<2+>濃度上昇の割合は、ATP誘発電流と同様の結果が得られた。陰イオンの作用のメカニズムとして、アスパラギン酸やメタンスルホン酸のような分子量の大きなイオンは、EC_<50>値がCl^-より小さい値になることから、ATPが作用する部位において競合していると考えられる。Br^-やI^-は分子量が小さいため、ATPが作用する部位に結合し作用を抑制すると思われる。また、F^-も分子量は小さいが、いずれの陰イオンよりも水和エネルギーが大きいため、ATPが作用する部位に結合できず作用を抑制しないと思われる。更に、いずれも最大反応値が異なることから、細胞外陰イオンはATPが作用する部位に対してアロステリック効果を示すと考えられる。これらの結果は論文にまとめ、Journal of Neurophysiologyに間もなく掲載される。
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