サイトカインなどの細胞内の微量なメッセージを検出する方法としてReverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR)が臨床検査の分野でも汎用されているが、この方法は細胞を破採してmRNAを抽出するため、どの細胞がどのぐらいの頻度で目的とするメッセージが陽性であるかを知ることはできなかった。 この問題を解決するために、細胞ひとつひとつのmRNAを核膜周囲に保護したままガラススライド上でPCRをかけるIn-Cell PCR法にさらに蛍光dUTPとテンプレートプローブによるハイブリダイゼーションを併用した細胞内蛍光RT-PCR法を考案し、発表した(FICL-PCR蛍光ラベルIn Cell PCR、実験医学、14:2175-2178、1996.) 方法の概略は検体をRNase阻害剤で洗浄後、10%ホルマリン処理して細胞膜のみを破壊する。ここに逆転写酵素を浸透させcDNAに変換する。これをガルススライドに展開した後特異的プローブであるテンプレートプローブと蛍光dUTPを加えて、PCR反応を行う。また、陽性細胞の検出は蛍光顕微鏡で行うというものである。 実際にこの方法を用いて慢性関節リウマチの病巣局所で関節破壊に関与しているTNFαのT細胞における陽性頻度を検出した。これによると末梢血中のT細胞の頻度は5%以下であるのに対して、関節液中の陽性頻度は15%でった。この結果から慢性関節リウマチでは関節局所に病態にかかわるT細胞が集まっていることが解かった。尚、この反応例は論文としてMicrobiology and Immunologyに投稿中である。
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