研究概要 |
CGH(Comparative Genomic Hybridization)法により、国立衛生試験所・細胞バンクの各種ヒト培養細胞株(計15種類:JCRB9021 U937,JCRB0112.1 THP-1,JCRB0006 HL60RG,JCRB0085 HL60,JCRB0710 EJ-1,JCRB9004 HeLa,JCRB9083 LoVo,JCRB0044 LU99A,JCRB0816 SBC-1,JCRB0817 SBC-2,JCRB0818 SBC-3,JCRB0628 MRK-nu-1,JCRB0622 HSC-2,JCRB0612 GOTO,JCRB0621 NB-1)について、各染色体ごとにゲノムの増幅および欠失領域の特定を行なった。その結果、CGH法は、以下の点で細胞株のゲノムの性状を捉える上で有用であることが判明した。(1)全染色体にわたってゲノムDNAのコピー数の増加および欠失の生じている領域とその度合を検出でき、核型分析では判定不明であった構造異常を特定できる。(2)グラフの波形パターンを指標として+/-0.25コピー以上の変化が1-10Mb以上の領域で生じている場合に細胞株の識別に利用できる。(3)特定な染色体領域に高コピー増幅あるいは欠失部位が見られ、それが既存のがん遺伝子やがん抑制遺伝子の領域以外である場合、その細胞を材料とした未知遺伝子のポジショナルクローニングへと発展できる可能性がある。また、CGH法の問題点として、ゲノムコピー数の変化以外の染色体異常(逆位、転座など)は検出できない点、セントロメア近傍付近ではcompetitor DNAの影響で検出感度が低い点が挙げられるが、これらを補足するために、対象とする細胞株の核型分析を併用することが、細胞株のゲノムの性状を捉える上で確実な手法であると考えられた。
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