研究方法として、グランデット・セオリー法に基づいた質的研究法でがん患児の母親に直接面接を行ないデータ収集と分析を行った。「母親の内的過程」は、情緒、感情、情動、母親自信の葛藤、家族の緊張、病気の経過、生活の変化など、母親の「思い」として表現された母親のあり様、と定義した。対象は、都内Aがん専門病院小児病棟で研究酸化について同意を得られたがん患児の母親26名であり、面接は半構造化面接法によって行われた。その結果、「母親の内的過程」は、子供の病気の経過に伴い、第1段階「基本的変動」、第2段階「病気の恐ろしさを実感」、第3段階「拒否」、第4段階「自我疲弊」、第5段階「空白」、第6段階「動かぬ自我」の段階を経ることが明らかになった。第2段階と第3段階の間は可逆的な進行過程であったが、他の段階の間は不可逆な進行過程であった。第1段階「基本的変動」は、第1局面<意識下の激動>、第2局面<衝撃>、第3局面<不安>、第4局面<希望>の4局面から構成されている。第1段階「基本的変動」での母親の「思い」のあり様は病気の経過に伴い、第1局面<意識下の激動>から、第2局面<衝撃>、第3局面<不安>、第4局面<希望>へと形を変え、疾病及び闘病生活に関わる衝撃的な出来事が発生する度に第4局面<希望>から第1局面<意識下の激動>まで戻り再び第1局面<意識下の激動>から第4局面<希望>までの「思い」の変遷を繰り返す。第1段階「基本的変動」のプロセスは必ず第一局面<意識下の激動>から始まり、また、母親の「思い」は状況に応じて第3局面<不安>から第1局面<意識下の激動>に戻る場合もある。「基本的変動」内から戻る局面は第1局面<意識下の激動>のみであり、他の局面に戻ることはない。
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