健康成人18名を対象として、体感音響振動を取り入れた体験音響システムを用いた音楽療法の効果について生理学的指標と主観的反応をもとに検討した。 【方法】実験Iは内田クレペリンテストによる負荷後、リラクセーション効果の期待される音楽を用いてボディソニックシステム(BS)を1時間体験、実験IIは1時間安静臥床とした。リラクセーション効果の指標は(1)マイクロバイブレーション(MV):左母指球に振動ピックアップを装着し、得られたMVの測定値よりパワースペクトラムを作成しα周波帯域成分の出現率(α%)を算出、(2)β-エンドルフィン(β-E)、(3)主観的反応:リラックス評価、振動の強さ、実験終了時の時間経過感覚について調査した。 【結果及び考察】1)BS体験時と安静臥床時の主観的リラックス評価を比較すると、13人(72%)の人がBSの方がリラックスできたと答えていた。2)BSと安静を比較するとα%はBSの方が高値を示したが、β-Eは差が認められなかった。3)α%の経時的変化をみるとリラックス群は非リラックス群に比べて高値であったが、60分後では両者の間に差は認められなくなり、主観的なリラックス評価とα%の間に有意な差は認められなかった。4)振動の強さの主観的評価とα%の間には関連が認められなかった。5)主観的リラックスの有無あるいは振動の主観的評価にかかわらずβ-Eは低下し、生理的リラックス反応を示した。6)リラックスできた、あるいは振動が最適であると感じた人のほうが、主観的経過時間を短く感じていた。以上のことより、主観的反応としては安静臥床に比べてBSはリラクセーション効果が得られ易いといえるが、生理学的な指標と主観的な反応とは必ずしも一致していなかった。今後さらに例数を増やして検討することが必要である。
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