研究概要 |
目的:子供を持つ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化を明らかにすること。方法:1,対象;告知を受け発病当時20歳以下の子供をもつ乳癌患者、2,調査方法;半構成面接調査、3,分析方法;役割意識の変化内容を個別に抽出し、母親-病者役割意識の関係から群にし特徴を命名。結果:1,対象の概要;乳房切断術35名、温存術3名の計38名で、術後2ヵ月〜15年9ヵ月、子供は当時1〜28歳。2,役割意識の変化;(1)母親役割葛藤群(4例)は、乳癌の脅威(死)を母親役割意識で受けとめ葛藤中。(2)母親役割拡大群(13例)は、脅威を「子供を残して死ねない」で受けとめ、葛藤後、母親役割持続のために病者役割をとり母親役割意識が拡大。生存でき子供が自立した者は「もう死んでも良い」と意識し自己の生き方を考慮。(3)母親役割切り上げ群(3例)は、脅威を「子供が巣立つまで生きられない」で受け止め、葛藤後、巣立ちの前に母親役割を切り上げ自己の生き方を尊重。(4)母親役割目覚め群(4例)は、脅威を母・妻・対社会的役割意識で受けとめ、役割の調整後、母親の病気から子供の成長を導く新しい母親役割の目覚め。(5)母親役割成長群(3例)は、体調不良を対社会的役割意識で受けとめ葛藤が生じ、その葛藤が母親・妻としての成長を促進、母親・妻と対社会的役割の両立が可能。(6)母親役割継続群(4例)は、乳癌が脅威ではなく発病前の母親役割意識が継続。(7)母親役割完了を意識した後に発病した母親役割完了群(3例)と元来母親役割意識の希薄な母親役割希薄群(1例)は、脅威を対社会的役割意識で受け止め、母親役割意識は変化なし。(8)自己改革群(3例)は、脅威を自己自身、母親・妻の役割意識で受け止め、自己自身との葛藤後、同病者の支持者となるものと自己自身を萎縮させる者あり。考察:役割意識は生存期間とその間の子供の変化、個人の知覚や置かれた状況によって変化することから、援助方法の確立にはさらに理論的飽和状態に近づけることが必要。
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