冷水へ手を漬けた際の手指皮膚温の低下を接触冷却という観点から検討した。環境温度0℃に設定した人工気候室おいて被験者の極薄手のビニール手袋を装着させ、冷水(水温0〜2℃)が直接接触しないようにして1分間両手(手首まで)を冷水に漬け、その後10分間の回復をみた。引き続き30分間の全身寒冷暴露後、再度1分間手指を冷水に漬け、その後10分間の回復をみた。被験者は寒冷環境に適した着衣をした健康な男子大学生7名であった。測定項目は直腸温、全身皮膚温6ヵ所(前額、胸、背中、前腕、大腿、下腿)と両手の皮膚温8ヵ所(手背、手掌、中指第2関節の手背側並びに手掌側)、全身と手指の温冷感である。さらに、手指の形態(手の体積、手および指の長さ・周径、手の幅)を前もって測定した。 寒冷環境暴露後すぐの冷水浸漬は全身の恒体温が維持されており、浸漬前の手指皮膚温も高かったため、皮膚温の低下速度は2回目の浸漬と比較して大きかった。1分間の冷水浸漬により、指先皮膚温は1回目で8〜10℃まで、2回目では3〜5℃まで低下した。この冷却率に被験者間の差はほとんど認められなかったが、回復期における手指皮膚温の上昇の仕方には被験者間に差が認められた。1回目と2回目までは浸漬前の手指皮膚温レベルは異なるが、その皮膚温の回復の様相は同一被験者では同じであった。すなわち、体熱バランスが異なる場合でも、手指皮膚温の反応は同一人では変わらないようである。この皮膚温の回復の仕方の個人差は、被験者の耐寒性の差であると思われるが、手指の形態(体積や大きさ)との関連は今回は認められなかった。今後皮膚血流との関連を検討する必要があると思われる。
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