ラット小腸の反転腸によるケルセチン配糖体の実験は個体差が大きく、吸収の目安にはなり得なかった。また、再現性よくデータを得ることも困難であった。そこで、9〜10週令のSD-雄ラットの小腸を上部・中部・下部に分け、それぞれの小腸粘膜のホモジネートより粗酵素液を調製してケルセチン配糖体と反応させることによりケルセチン配糖体の代謝を検討することを試みた。すなわち、ケルセチン配糖体の位置異性体3種とルチンを反応させ、酵素分解によって生成したケルセチンを高速液体クロマトグラフィーで定量分析した。小腸内にはβ-グリコシダーゼが存在しているので、代謝の経路の一つとしてβ-グリコシダーゼ活性を検討することは重要であると考える。 その結果、ケルセチン配糖体の糖置換位置によってβ-グルコシダーゼ活性には差が見られ、quercetin-4′-glucosideがquercetin-3-glucosideやquercetin-7-glucosideより約4倍加水分解され易いことがわかった。また、ルチンはほとんど反応しないことも明らかとなった。これは、例えば細菌由来の市販標品と活性を比較してみても同じ傾向であった。また、部位別に見ると、小腸中部での活性が最も高く、ついで下部の活性が高かった。したがって食物中のケルセチン配糖体は小腸内で加水分解されやすいものとそうでないものがあり、主として小腸中部で反応が起こることが推測された。今後、野菜などの抽出物でも検討したいと考えている。
|