研究概要 |
水溶性ビタミンである葉酸は、プリン,ピリミジン,アミノ酸,タンパク質など、生体の非常に重要な物質の合成に関与しており、生命の維持に基本的でかつ非常に重要なビタミンの1つである。しかしながら、その定量法すら十分に確立しておらず、摂取量およびその必要量も推測の域をでていないのが現状である。そこで、本研究においては、葉酸の全誘導体の特異的な定量法を確立を試みた。さらに、確立した定量法を用いて、生体内の葉酸、特に代謝の中心である肝臓中の濃度および分布を明らかにすることを目的とした。 1,葉酸およびその誘導体の定量法の確立 葉酸は、生体内では還元型となり、メチル化,ホルミル化等の反応により、8種類の誘導体として存在しているが、微量かつ化学的に非常に不安定であるため、その定量法すら十分に確立していなかった。本研究では、HPLC(カラム:μBondasphere Phenyl,移動相:50mM KH_2PO_4と0.1mM EDTAを含む12%メタノール(pH3.5)と電気化学検出器(+750mV,Ag/AgCl)を用いる方法により、8種類の葉酸誘導体(テトラヒドロ葉酸(THF),5-メチル-THF,5-ホルミル-THF,10-ホルミル-THF,5,10-メテニル-THF,5,10-メチレン-THF,プテロイルグルタミン酸,ジヒドロ葉酸)を特異的かつ高感度に定量することができた。 2,肝臓中の葉酸誘導体の定量 この確立した定量法を用いて、生体内の葉酸代謝の中心である肝臓中の葉酸誘導体の濃度およびその分布を明らかにすることを試みた。その結果、肝臓中には、6種類の葉酸誘導体が存在しており、10-ホルミル-THFが全体の53%をしめ、THF,5-メチル-THF,プテロイルグルタミン酸が全体の約15%であった。
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