本研究は女子競歩競技者を競技レベルで分類し、同一の相対強度の条件下で下肢の利用法についての差異を分析した。また下肢の筋力測定を行い、競技力の差が体力的要素によるものか技術的要素によるものかについての検討を加え、競歩のトレーニングの方向性を示すことを目的とした。 その結果、実際の競技レベルと筋力には相関関係はみられなかった。従って、競歩の競技レベルは技術的要因及び有気的要因により決定されるものと推察された。競技記録下位群は競技記録上位群と比べると速度増加にともなう前脛骨筋の活動の増加が著しかった。つまり前脛骨筋のリラックス度が高いほどパフォーマンスが高くなるものと考えられる。また、高速度に対応するためには、股関節伸展のための大腿二頭筋の活動が重要であることが示唆された。 筋電パターンから、股関節動作に関与する筋の活動や、立脚中の膝関節の使い方において両群間に違いがみられた。競技記録上位群では、立脚後期に膝を屈曲して股関節伸展を効率よく推進力に変えるなどして積極的な股関節伸展を行い、重心移動をより速くしていると思われる。 以上の結果から、今後のトレーニングの課題として、股関節の作用や、膝関節の作用を意識した歩きこみや、股関節動作に関与する筋の補助トレーニングを重点的に行う必要性のあることが示唆された。
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