本研究ではイメージトレーニング前後の脳波を測定し、はたしてイメージトレーニングの効果を脳波において評価が可能かどうかを検討する事を目的として実験を行った。 評価に用いた脳波の指標としては、随伴生陰性変動(CNV)とFmθ波を用いた。被験者は成人男性6名で、イメージトレーニングは3週間行った。 その結果、CNV、Fmθ波ともにトレーニング前と比較するとトレーニング後の方が振幅やパワー値が大きくなる傾向を示したが、Fmθ波に関してはトレーニング前後の差は統計的には有意ではなかった。 本研究ではFmθ波の測定はLaukka et al.(1995)が示したように4-7Hzの帯域の脳波を周波数分析したが、閉眼によるイメージ想起はかなりの眼球運動を伴った。そのため眼球運動の混入が明確な差を見いだすまでにいたらなかった原因ではないかと推察された。有意な変化が見られたCNVに関しては、有意な変化はイメージトレーニングによるものではなく単に筋の収縮の違いという運動系に違いによるものではないかという指摘がなされた。そこで本研究ではさらに、CNVから実際に筋収縮による成分(motor component)とそれ以外の成分(non-motor component)とに分解することを試みた。その結果、Damen & Brunia(1994)らが示したdelayed feedback paradigmによってCNVから心理的な成分(SPN;stimulus-preceding negativity)を分離することができ、さらにこの成分が音刺激の判別の困難度といった心理的要因によって変化することが示された。今後はイメージトレーニングによるCNVの増大がこの心理的な成分によるものであることを示すために、delayed feedback paradigm を適用した脳波による評価が行われるべきであることが示唆された。
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