研究概要 |
健常な成人男性10名を被験者として、全身性激運動(60%VO_2max 60分,60%VO_2max 120分,80%VO_2max 60分)を負荷し、各運動負荷前安静時、運動直後、運動終了後30分経過時、1日後、3日後、および5日後において、血中のCRP濃度をラテックス凝集ネフェロメトリー法により定量し、激運動負荷後における血中CRPの濃度動態を観察した。さらに、激運動後の血清CRP濃度に相当する量の精製CRPを添加した高脂血症患者血清を検体とし、ゲルろ過法によるCRP・リポタンパク結合試験を実施することにより、高脂血症患者の激運動参加時におけるアテローム硬化発生の危険性について検討した。 その結果、血清CRP濃度は、60%VO_2max 60分ならびに60%VO_2max 120分の運動において、負荷後1日目に上昇傾向が認められたが、その濃度上昇は基準値以下での変動であった。また、基準値以下の濃度(0.1mg/dl)で精製CRPを添加した高脂血症患者血清10mlをゲル濾過したところ、CRP・リポタンパク複合体の形成は認められなかった。 以上の結果より、60%VO_2max 120分ないし80%VO_2max 60分以下の運動では、高脂血症患者血清中においてCRP・リポタンパク複合体は形成されず、アテローム硬化発生の危険因子となる可能性は低いことが示唆された。しかし、長時間におよぶ激運動参加後に、血清CRP濃度が異常上昇することが報告されていることから、種々な運動強度ならびに運動様式を設定して、高脂血症患者の運動参加時における脂質代謝について検討を加える予定である。
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