呼吸との関係において筋収縮を負荷するタイミングが静脈還流に及ぼす影響について明らかにするため、下半身陰圧負荷法によって下肢に血液を貯留させて循環を障害した際に吸気相あるいは呼気相で足底屈運動を行わせ、循環動態の改善の程度を比較検討した。陰圧負荷は-20mmHgと-50mmHgの2種類について行った。被検者には健康な男子大学生7名を用いた。 得られた結果は以下の通りである。 1.下半身に陰圧を負荷すると、-20mmHgの場合には心拍数は上昇、一回拍出量は減少、心拍出量と平均血圧はほとんど変化しなかった。-50mmHgの場合には、心拍数は上昇し、一回拍出量、心拍出量と平均血圧は低下した。 2.下半身陰圧負荷時に運動を行うと、-20mmHgと-50mmHgのいずれの負荷でも運動と呼吸のタイミングに関係なく、心拍数、一回拍出量、心拍出量と平均血圧は増加する傾向を示した。しかし、その増加量は、心拍数と心拍出量については吸気相よりも呼気相で運動した場合の方が大きく、一回拍出量と平均血圧については両条件間に差はなかった。 以上のことから、筋ポンプによる静脈環流促進効果は、筋収縮と呼吸とのタイミングにあまり影響されないが、心拍出レベルは呼吸とのタイミングによって異なることが明らかになった。すなわち、吸気時に筋収縮を行った場合よりも呼気時に行った場合の方が心拍出レベルは高い。これは、主に心拍機能の亢進によることが示された。
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