研究概要 |
本研究の目的は,1980年代より指摘されてきた都市システムの再編が,1990年代における地価の下落に与えた影響を明らかにすることである。分析の結果,以下のような知見を得た。 (1)地価の急騰は,土地担保を基本とするわが国の融資制度に起因し,地価上昇のタイム・ラグが融資額の地域間格差を拡大させたことによって生じた。そのため,地価上昇が全国に波及した時点で投資家の投資競争は終焉を迎え,地価の急騰は鎮静化した。また,不動産融資に対する総量規制も効果的に作用した。 (2)商業地について見ると,一般に,地価急騰の規模が大きかった都市ほど地価の下落幅も大きい。しかしながら,そのような関係が見られない都市も存在する。地価の上昇幅に比べて,下落幅が相対的に小さかった都市の多くは,全国的都市システムにおける拠点都市として重視されてきた都市であり,投資競争による資本投下が土地の利用価値を上昇させたため,地価の下落幅が小さかったと解釈される。一方,地価の下落幅が相対的に大きかった都市は,三大都市圏内の中規模都市であった(一部を鹿児島女子大学研究紀要18-1に公表)。 (3)地方都市における商業地地価の変動パターンは,地方ブロックごとに特徴を指摘することができ,それは地方ブロック単位で形成される地域都市システムの特徴から説明される。例えば,都市の階層順位が明瞭で,県庁所在都市が県内中心としての地位を確立している九州地方においては,中央からの資本投下が福岡市を介して効果的に中小都市に配分されたために,各都市の地価変動パターンは中央のそれと類似する特徴を示したと考えられる(一部を鹿児島女子大学研究紀要18-2に公表)。
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