研究概要 |
堆積物の年代測定法として最近開発された光励起ルミネッセンス(OSL)法を導入し,青森県小川原湖の堆積物の年代を求めることで,この堆積物の年縞年代とOSL年代を連続的に比較・検討することを目的として研究を行った. 研究に用いた小川原湖の堆積物は湖底から深さ8mのところまでコアが採取され,明暗の縞からなる年縞の枚数と既知の火山灰層の年代から,過去2,300年前から現在までにに堆積したものであることがわかっている.この堆積物を10cmごとに分割してOSL年代測定を行った.各試料は,過酸化水素水で有機物を除去し,塩酸で炭酸カルシウムを除去して乾燥させ,アセトン中での沈降速度の差から,1-8ミクロンの粒径の粒子だけをとりだした.この粒子をアルミ板上に沈めて乾燥させ,実験に用いた.これ以外の鉱物分離は行わなかった. 励起光には波長880nmの赤外発光ダイオードを用いた.異なるいくつかの線量のγ線を照射した試料を用意し,OSL信号強度の伸びを信号強度0の位置まで外挿して,試料が過去にあびた放射線量を求めた.測定前に不安定なトラップからの発光をとりのぞくためのアニーリングは行わなかった.また,試料の含水率と,γ線スペクトロメトリーで測定したウラン,トリウム濃度から,1年間に試料のあびる放射線量を推定し,被爆線量を年間線量で割って年代を求めた. 求められたOSL年代測定と年縞年代との相関は悪く,湖成堆積物のOSL年代測定はこのままでは問題の多いことがわかった.今後の検討事項としては,OSL測定前のアニーリング,用いる発光波長の問題があげられる.
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