研究概要 |
本研究では,複雑な知識構造を有する学習項目を題材にした適応型学習システムに関する研究・開発を目的として,以下のような機能を有する知的教育システムに関する研究・開発を行った. 1.システムは学習者に提示する問題を,この問題を解決するための知識構造として保存する. 2.システムは学習者の提示された問題に対する解答状況から学習者の有する知識構造を推論する. 3.システムの構造と学習者の構造とを比較し,その結果から次に出題する問題を決定する. 4.システムの構造と学習者の構造とを比較し,内容的に適合したアドバイス文を自動的に生成する. 具体的には,高校物理の力学を採用し,インターフェース部・問題解決エキスパートシステム部・出題最適化エキスパートシステム部から構成されUNLX上で動作する.また,人間が実際に力学問題を解答する場合の流れ「問題を読む→図を書きながら考える→方程式を立て,解く」に忠実に学習者を支援することを最大の特徴とする.そのため,問題解決エキスパートシステム部では,知識構造を定性的知識構造と定量的知識構造に分離し,それぞれの知識構造を学習者の入力する図形情報と数値情報から推定し,最終的に知識構造融合ユニットで緩やかに融合する.定性的知識構造の推定には定性推論の技術を,また定量的知識構造の推定には文字認識と知識ベースの管理技術を用いて,人間教師が学習者の理解状況を推定する過程をモデル化した.さらに,出題最適化エキスパートシステム部では,知識構造融合ユニットから受け取った学習者の知識構造から複数の特性値を抽出し,Fuzzy推論を用いて理解状況を定量化し次の問題を選択し,アドバイス文とともに提示する機能を実装した. 以上より,記号論理の範疇の人工知能技術だけではなく,Fuzzy理論などとの融合,すなわちコネクショニズムの範疇に拡張した知的教育システムの研究の基礎的知見を得ることができた.今後も他の技術との融合を検討し,あらたな人工知能研究のパラダイムに関する検討を行う予定である.
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