研究概要 |
知的教育システム(ITS)は計算機上において,高度に個別化した指導をすることを特徴としているが,知識伝達型の教育形態であるため学習者は受動的な学習になる傾向にある.そこで従来の受動的な学習形態に加えて,学習者が主体的に探求し,理解を深めるといった発見学習の形態への要求が高まっており,双方向型学習環境(ILE)の研究が注目されている.そこで本研究では,VR技術を導入したILE型の知的教育システムのフレームワーク設計を目的とし,その実証環境として発電プラントの運転員教育訓練を対象とした教育システムを提案した.発電プラントの安全性への要請は年々高まっており,知識伝達型のみの教育だけでなく,その知識を利用した実戦的な訓練の形態が望まれている点から考えてもプロトタイプシステム構築は有用である. 本年度は特に,【1】VR型ILEのレ-ムワーク考察,【2】構成原理の整理,【3】プロトタイプシステムの設計,【4】発電プラントの運転員訓練における試作システムの構築を行った. 【1】,【2】フレームワークの考察,及び構成原理の整理:最初にVR型ILEの構成原理について整理し,以下に示す観点から,VR型ILEはITS側とVR(マイクロワールド)側の2つのモジュールで構成を行った. ・ITS側ではテキスト情報,記号等による問題・知識に対して問題解決や解説等による学習を行い,正答を導き,知識を獲得する. ・マイクロワールド側ではVR技術を用いた3次元仮想空間上で,自由探索や学習者自ら状況を設定して操作を行い,ITS側では得られないリアリティのある経験・体験を得ることを可能とする.また,宣言的知識や手続き的知識を発見し,それらの意味を理解・検証する. ・このような学習を繰り返すことにより,リアリティのある学習環境で知識をスキルとして身に付けることが可能となる. ・学習者の理解状態を記述した学習者モデルをITS側とVR(マイクロワールド)側で共有し,ITS側における知識に関する理解状況とVR側における操作に関する理解状況を結び付けて記述する. 【3】,【4】プロトタイプシステムの設計の実施:上記【1】,【2】での考察・整理に基づき,VR型ILEのプロトタイプシステムを構築した.具体的には,ITS側はSUN製WS上で,VR側はDOS/Vマシン上で開発を行った.学習対象領域として発電プラント運転員訓練を取り上げ,ITS側は運転手順・関連知識学習をモジュール,VR側は自由探索・シミュレーションモジュールで構成し,両者をイーサネット接続することにより学習者モデルを共有させ,知識とスキルを関連づけた個別指導を実現した.
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