研究概要 |
映像視聴の個人差を過去の経験によるスキーマと関連づけ,映像を視聴した分類することを課題とした成人対象の実験を行ってきた.成果として映像の分類方法には短期記憶と関連する「共通点分類」,長期記憶と関連する「イメージ分類」の二つがあること,また,個人差が表面化する段階として,映像から共通点分類のための「キュー(手がかり)」をみつけだす段階,映像が「キュー」に合致しているか判断する段階,いくつかの映像からイメージを浮かべる段階の三つがあることを明らかになっている. 今回,上記の個人差が児童でもみられるかどうか,スキーマによる分類の違いが児童でもみられるかどうかをねらいとして以下のような実験を行った. 〈実験映像〉著作権フリーのCD-ROMから「京都」「大阪」「イタリア」の静止画を4枚ずつ選び,それらをもとにアマチュアの作曲家に依頼して10秒程度の音楽をつけ,静止画+BGMという形にした. 実験映像はコンピュータ上で被験者が自由に視聴できるシステムにした. 〈被験者〉大阪府下のA小学校5年生10名,富山県下のB小学校5年生11名 〈実験手順〉映像視聴→映像分類→インタビュー 実験の結果,共通点分類が多いこと,また個人差はキューをみつけだす段階でうまれやすいことがわかった.スキーマとの関連では,富山の児童は「テレビでみたことがあるから」と大阪名物(道頓堀)を「大阪」と分類しているのに対し,大阪の児童は「遠足で行ったから」と大阪以外にもあるような映像(大阪城公園)も「大阪」と分類している.また,富山の小学校は海に面した町であるが,いくつかある川の映像についてはすべての児童が「海」と分類していた. 以上より,児童と成人では映像分類の方法に違いがあること,スキーマによる映像分類が児童でも行われることがわかった.今後,ネットワーク上でこの実験を行い,主に地域のスキーマによる映像視聴の個人差をみていきたい.
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