研究概要 |
本研究では、「問題解決能力」のうち、図形に関する問題を解く能力(空間認識力)に焦点を絞り、空間テストの問題解決過程の解析を通じて得られた知見をまとめ、その結果を基に、空間認識力を測定するテストの設計についての研究を行った。 これまで、心理測定の分野で開発された空間テスト(Mental Rotations Test,以下MRTと略)の問題解決過程を、アイカメラによる視線追跡法によって解析してきた。本年度は、これまでの一連の解析結果のまとめを行って国際会議(7th International Conference on Engineering Computer Graphics and Descriptive Geometry, Cracow)で発表した。会議では、MRTの高得点者と低得点者の解決方略の違いは空間操作能力の違いによるものであり、MRTの得点は空間認識力の中でも特に、空間を「操作」する能力を反映していることを発表した。 さらに、一度に多人数の問題解決過程データを集積するシステムの開発に取り組み、Windows95をOSに用いたパソコン上で動く問題提示ソフトウエアの試行版を作成した。作成にあったては、これまでの視線追跡実験で得られた知見をもとに、解決過程のデータを得るためにどのように問題を提示すればよいかを検討した。多肢選択式の問題の場合、各小問の選択肢を1画面に一度に提示するのではなく、1つずつ提示することで、選択肢を絞り込んでいく過程を記録できるようにした。これによって、従来用いてきたアイカメラによる視線追跡法よりも簡単に、パソコンで多人数の解決過程を記録できる可能性が出てきた。また、これまでのMRTを基に、教示や提示順などを改良して、従来よりも短時間で正確に空間操作能力を測れるように設計し直した。
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