研究概要 |
振幅変調波に基づく多重演算システムにおいては、素子間を接続する配線情報を周波数の選択情報に変換することにより配線の削減を図っている.従って,情報の識別を行う周波数選択回路(フィルタ,復調回路)をいかにコンパクトに実現するかが重要な鍵となると考えられる.本研究では,これまでに提案した変復調技術を利用した周波数検出方式を発展させ,通信と演算を一体化した高機能ゲートの基礎実験ならびに性能評価を行った. 1.集積回路において複数の周波数を情報担体として用いる際の技術的課題を明らかにした.特に,理論計算,原理実験により,多重度の増大と動作速度,回路規模のトレードオフの関係をダイナミックレンジ,SN比などの観点から導出した. 2.通信と演算を一体化した高機能ゲートの集積化に関する検討を行った.本ゲートはアナログ乗算器とフィルタ回路から構成され,多重化された周波数を乗算することにより複数の周波数を並列に選択する.これにより,等価的に複雑な配線情報が周波数の選択情報に変換され,配線数の削減が可能となると共に,積和演算等のアナログ演算が選択と同時に実現可能となった.このゲートの動作を個別素子で確認すると共に,電子回路解析プログラム(SPICE)を用いて,ゲート単体の性能評価を行った. 3.これまでに提案してきたウェーブパラレルコンピューティングの設計アルゴリズムに基づき,膨大な配線と演算が要求されるニューラルネットワークを設計した.その結果,提案した通信と演算を一体化したゲートを用いることにより,従来方式と比較して,配線数,乗算器数を同時に1/(多重度)に削減可能となった.しかし,多重度の増大に伴い,正弦波キャリア発生回路の回路規模が増大する問題が明らかとなった.今後,正弦波以外の直交キャリアを用いてこのオーバーヘッドを軽減する必要があると考えられる.
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