研究概要 |
まず,森林と草原のモデル化の手法を検討した.一本の木や草を単位ボリュームとして表現するための密度分布を,再帰関数や片持ち梁モデルなどを用いて生成した.次にこの単位ボリュームを,2次元ないし3次元的な分布関数に従って空間に配置する手法を構築した.これにより,比較的少ないデータ量で森林や植物の群生が表現でき,しかも単位ボリュームの繰り返し利用に伴う違和感を緩和することができた. また,複数の種類の2次元的分布関数を基にした単位ボリュームの配置を多重化することで,表面構造の複雑なものが表現できるようになった. 並行して画像生成ソフトウェアの改良も進めた.ボリュームモデルからの画像の生成には,視線探索法(レイトレーシング法)を用いるが,膨大な計算時間を要する.そこで,これまで開発してきた画面分割による並列化手法を適用した.しかし,画面分割法では,各プロセッサは基本的にすべての物体データ(今回の場合はボリュームデータ)を必要とする.システム全体でのメモリ使用効率を上げるため,共有メモリ上に置いてアクセスする手法を採った.その結果,8台程度のプロセッサをもつ共有メモリ型マルチプロセッサワークステーションでは,プロセッサ数に比例した速度向上が得られた. 最後に人体皮膚の表現にも着手した.皮膚の質感を左右すると考えられる角質層を前述の手法を用いてモデル化した.角質層は複数の構成要素からなり,それぞれ光学的性質が異なる.それぞれの要素に対して密度分布を定義した.また,毛穴を表現するために,別途,負の密度分布を定義し他の分布と多重化するなどした.しかし,各構成要素の光学的性質などにまだ不十分な点があり,満足のいく結果が出ているとは言い難い,今後は,実測したデータに基づくモデル化,角質層より下層のモデル化,計算量の削減などに取り組む必要がある.
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