研究概要 |
本研究では,利用者と計算機が協調して意思決定を行なうプロトタイプシステムを開発した.このシステムの目的は,計算機(エージェント)に利用者の主観を伴う意思決定の模倣をさせ,意思決定の一部を自動化することによって利用者の負荷を軽減することにある.そのためにはエージェントの決定に利用者の決定をできるだけ正確に反映させる必要がある.また自動化が容易でない複雑環境下では,エージェントが自動的に判断を下すのではなく,利用者の決定を仰ぐような柔軟性を持たせる必要がある.開発したシステムの特徴は以下のとおりである. 1.複雑環境においては意思決定のベースとなる要因は複数ある.そこでそれぞれの要因に応じてエージェントを割り当て,それらの部分的決定の合成として全体的な意思決定としている.合成の手段としては重みつき和を用いている. 2.エージェントが行う意思決定はYes, No, Unknownの三値である.Unknownはその決定に関するエージェントの確信度が低く,利用者の判断を仰ぐ場合を表している. 3.エージェントがいずれの判断を選択するかの境界はYesとUnknown間とNoとUnknown間の二つの閾値により定められている.またこれらの閾値は利用者の意思決定を観測することにより更新される.この学習機能により利用者の意思をエージェントの意思決定により正確に反映させることができる. 以上の意思決定支援システムはモノポリ-ゲームにおける意思決定問題に応用し,利用者の意思決定の学習に有効であることが示された.今後の課題としては,このようなシステムをWWW上に展開し、実世界における意思決定支援を行い,提案した手法の精緻化を行うことがあげられる.
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