本研究では新しい個人識別の方法として顔画像を用いる方法を検討した。この方法では離れた地点から撮影した画像が利用できるため、識別に際して特別な動作が不要であるという利点がある。 撮影距離が変化した場合基準となる顔画像と大きさが異なるため、そのままでは正しく照合ができない。この点に関しては、数種類の撮影距離によって撮影された画像を多数収集して顔の大きさが変化しても特徴となる点(目、鼻、口等)を高精度に検出する方法を検討した。これまでニューラルネットワークを用いて特徴点を検出する方法を利用してきたが、顔画像の大きさの変化に対応するため撮影距離の異なる画像を一人につき数種類用意する必要があった。この点を改善するため単一の画像をもとにして撮影距離の異なる画像を疑似的に生成してニューラルネットワークの学習に利用する方法を検討した。その結果撮影距離の異なる数種類の画像を用いる場合と同程度の検出率を得ることが可能になった。よって一人につき1枚だけ基準となる顔画像を用意すればよく、基準データの収集が簡略化された。これは実用性を考えた場合有効であると考える。 画像の前処理としては、これまでにフーリエ変換、アダマ-ル変換、コサイン変換、ハ-ル変換等を比較してきたが、更にウェーブレット変換も加えて各変換手法の優位性を検討した。その結果フーリエ変換を用いた場合が最も識別率が高く(平均97%)、次にウェーブレット変換が高かった。基準画像との比較方法は最初は変換結果全体を用いる単純なテンプレートマッチングを用いていたが、識別率を向上させるためには変換結果の低周波成分に重み付けをするのが有効であることがわかった。今後は顔の正面からややずれた角度から撮影された画像にも対応できるようにする必要があると考える。
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