動的な素子として最も単純な位相振動子を用い、それらの相互引込みの結果生じるクラスタリングパターンによって入力を表現・分類するニューラルネットワークを構成し、教師なしで入力信号のみからその分類・判別を行った。ここでは特に、初期視覚及び多脚歩行における認識モデルを提案した。今年度の研究では、視覚系については、大脳皮質野の細胞に対応するIntegrate-and-fire型の位相振動子を用い、視覚パターンの切り出し・分類、両眼立体視の各モデルについて、計算機シミュレーションにより、その特性を評価した。また、多脚歩行については、まず実機の四脚ロボットを製作した。各脚は3関節からなり、腰関節を含めて、全13関節を持つが、ここでは各関節に周期的運動を仮定し、その引込みにより歩行を実現する。即ち、一脚の運動はその3関節の引込みにより、ロボットの歩行は4脚と腰関節の引込みにより実現される。今年度は、実機の製作と、スタティックなモデルによる歩行学習を確認した。同時に、従来型の静的素子によるニューラルネットワークとの性能比較のために、階層型ネットワークやホップフィールドネットワークを実用課題に適用し、数値シミュレーションにより評価した。課題の一つは、組合せ最適化としてのスケジューリング問題である。ここでは、複雑な制約条件を有する射出成型工程のスケジューリング問題に対し、シミュレーテッドアニーリングの他、遺伝的アルゴリズムとタブーサーチを適用し、併せて評価した。別の課題として、自律移動ロボットの行動学習を行った。階層型ネットワークでの教師なし学習により、障害物回避と餌獲得行動の獲得を確認した。
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