活火山を多数有す日本では、各火山が将来どんな様式の噴火を行うかを予測することは、災害予測の観点から重要なことである。本研究では、成層火山に見られる噴火様式と噴出物の岩質の対応関係を、東北日本火山フロントに位置する那須火山群噴出物を対象として考察した。 那須火山群は3つの成層火山の集合体と考えられる。これらは、円錐形火山体の形成→カルデラの形成→カルデラ内での活動という成長過程をおよそ辿る。 円錐火山形成期には、ストロンボリ式の活動によって主に溶岩流が流出され、まれにスコリア流が流下する。カルデラ形成期には山体崩壊が起こり、岩屑なだれ堆積物が形成される。カルデラ形成後にはプリニ-式、プレー式、ブルカノ式などの爆発的な活動が卓越し、火砕流堆積物、溶岩流や溶岩円頂丘が生成される。活動が進むにつれ岩質は、円錐火山形成期の玄武岩-安山岩からカルデラ形成後の安山岩-デイサイト主体におおよそ推移する。 那須火山群の中で最新の活動である茶臼岳では、プレー式、ブルカノ式の噴火によって安山岩質の噴出物が噴出されている。プレー式の場合、ブルカノ式の場合よりも全岩のSiO_2量が高いこと、ブルカノ式の噴火に伴なう火砕流堆積物中の岩片は組成幅が比較的広いこと、それに伴って形成された溶岩円頂丘は組成幅が狭く、また、僅かにSiO_2量が高いことが挙げられる。 以上のように、噴火様式は基本的にはSiO_2含有量に左右される。しかし、同じSiO_2含有量であっても、安山岩-デイサイト主体の場合、様式が多様で、また、噴出物も多様の場合がある。 過去の噴出様式をより詳細に岩質から推定するには、さらに多くの事例を明らかにすることが必要である。現在のところ将来の噴火様式を岩質から予測するには、山体全体にわたる岩質の推移を明かにし、各火山がどの成長段階に達しているかを判定することが重要であると思われる。
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