阪神大震災では、情報の欠如あるいは無規格な情報の流通が連鎖的に2次的・3次的な問題を引き起こし、その集合が複合化・長期化した。そこで本研究では、災害情報の流通・管理についての体系的な研究の第一歩として、建物の被災情報ならびに人的被害情報の流通・管理の問題について検討を行った。解析対象地域として西宮市を選び、阪神・淡路大震災で得られたデータを基に解析をおこなった。 阪神・淡路大震災における対応事例の解析から、被災情報の流通・管理には、1)羅災台帳の数値化、2)地理情報システムの導入、3)日常業務にも利用できるデータベースの構築、4)災害情報システムへの組み込み、などの機能が必要であることが明らかになった。羅災台帳の数値化に関しては、阪神・淡路大震災における西宮市の建物羅災証明に基づいて、コンピュータ上で建物被災データベースを構築した。この建物被災データベースは、地理情報システムを用いて構築され、被災状況が色分けてされて表示可能となった。これによって、空間的に分布する建物被災状況が一目で把握でき、台帳の修正、ガレキの処理、建物解体などにも有効であることが明らかになった。さらにこのデータベースは課税台帳を基本とし、その台帳に被災関連の項目を追加するだけで建物被災台帳データベースとして利用できるように設計されているために、平時からデータの更新等も容易である。 つぎに、阪神・淡路大震災における西宮市の人的被害の状況をこのデータベースに取り込み、データの充実を計った。さらにこのデータベースを用いて、人的被害状況を町丁目別に集計し、建物全壊率と死亡者の関係を明らかにした。今後、地震動推定および建物被害推定法の開発により、死者数の推定ならびに空間分布が推定可能となり地域防災計画策定等に大きく寄与できると考えられる。
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