研究概要 |
本研究は基盤の断層挙動を再現したアルミニウム棒による模型実験を行い,せん断層の発生形態を観察し,基盤に作用する応力分布を測定するともにそのせん断層の生成に関する理論式を推定することを目的としている。本研究は現有の設備がないため,アルミ棒を用いた基盤上の応力が測定可能な最大層厚500mmまでの実験装置の製作から着手した。本装置は移動基盤と固定基盤のアルミブロックの組み合わせにより,鉛直及び斜め方向に上下動し,正・逆断層変位を模擬することができる。本年度では鉛直方向に基盤を上昇させた実験のみに注目したため,移動・固定基盤の接点角は90°としている。本装置は従来の実験装置よりも5倍のスケールの実験(層厚500mmまで可)が行えることにより,寸法効果についてより吟味することができる。また,ロードセルは移動基盤側に6個,固定基盤側に10個を配置し,各アルミブロックに作用する平均直応力が測定できるようになっている。基盤の鉛直断層変位に伴う層厚50〜400mmのアルミ棒積層体の実験において,局所的,大局所的に発達するせん断層の変形構造,すなわちせん断層の発生形態を明らかにし,せん断層の変形と基盤上に作用する応力とは相関性があることが分かった。さらに,せん断層はV(断層(鉛直)変位量)/H(模型地盤の層厚)=4.5〜6.5(%)で地盤表面に到達し,W(模型地盤表面到達位置)/H(模型地盤の層厚)が固定基盤側(+側)で平均0.40,移動基盤側(一側)で平均-0.23となった。基盤上に作用する応力と位置は,層厚100〜400mmで固定・移動基盤境界付近における固定基盤上の応力は減少し,移動基盤上の応力は増加する。固定・移動基盤境界から離れた点の応力は変化しない。地盤表面に到達した位置とその時の断層変位量,基盤上に作用する応力と位置は,層厚100〜400mmで寸法効果がないということも分かった。残念ながら,せん断層を生成に関する理論式を推定するには至らなかった。
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