研究概要 |
プラズマは非線型結合により多種多様の変化をする。その中で自己組織化現象もまた非線形性が引き起こすプラズマの緩和現象の一つである。ここでプラズマ研究においてキンク不安定性が自己組織化現象と微妙に相互作用し合い、プラズマの新しい構造が形成されていく。本研究では自己組織化とキンク不安定の相互作用を明らかにすることによって新しい物理の理解を深めていくことを目的とする。 キンクモードの基礎特性を詳細に調べるためにキンク不安定を外部から不安定化するような実験を行った。つまりプラズマを導体シェルから故意に離すことによりキンク不安定性の励起に成功している。 実験では(m,n)=(1,2)及び(m,n)=(2,3)のヘリカルキンクモードを調べた。以下それぞれm=1、m=2モードと略す。m=1モードは磁気軸をも変位させる大振幅の振動である。このモードのポロイダル方向の回転速度はポロイダル位置によって異なることが解った。これは磁場・電場分布の疎密に起因すると考えられる。これにより磁気再結合が局所的に生じていることも解った。プラズマと壁の相互作用(PWI)もまた空間的に偏りをもって高揚される。一方m=2キンクモードの場合はm=1と比較して、その振る舞いが大きく異なる。先ずプラズマのポロイダル回転の速度が一定である。また磁気軸もまた変位しない。そのためPWIも空間的に対称的であり、その大きさもm=1と比較して小さい。またプラズマの自己組織化現象は観測されていない。つまりm=1キンクモードの振る舞いが動的な不安定性とするとm=2キンクモードは静的な不安定性であるといえよう。 本研究でm=1とm=2キンクモードの性質の違いについて調べた。一般的に不安定性はプラズマの閉じ込め特性を悪化させるイメージを持つが、逆にプラズマの構造を再構成させるトリガー的な役割を演じることもあり、もろ刃の剣として客観的に扱われるべきである。
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