キャピラリー放電ピンチのダイナミクスを調べるために、1次元円筒座標系の電磁流体コードを作成した。アルゴンを使ったコロラド大学の実験や東京工業大学の放電ピンチの実験に合わせた駆動電流波形をインプットすると、最大ピンチ時間やX線レーザー利得の持続時間などの実験結果を非常に良く再現することができた。また、最初に衝撃波が中心に到達し、その後に電流層がローレンツ力でピンチして行くという詳細も明らかになった。 X線レーザーを短波長化するためには、アルゴンより重い元素のプラズマを使う必要があり、クリプトンまでの元素に対するシミュレーションを実行した。元素が重くなるに従いネオン様イオンを生成するための電子温度・電子密度が高くなり、要求される駆動電流も飛躍的に増大した。初期プラズマ半径を小さくすれば必要とされる電流は少なくて済むが、X線レーザーの利得が得られる領域が狭くなり、さらにプラズマの密度勾配が大きくなることから軸方向に伝播するX線レーザーのパスが利得領域から逸れてしまうことが分かった。 2次元の電磁流体コードは、新しい数値計算手法(CIP法)を取り入れ、ピンチ・ダイナミクスの不安定性を精度良く解析できるように開発した。2次元コードによる解析では、今まで予想されている電磁流体不安定性(ソ-セージおよびキンク不安定性など)よりも、密度の低い電流層が中心の高密度プラズマを圧縮する際のレーリー・テーラー不安定性の方が成長率が大きく、初期半径を小さくすればする程成長率が大きくなることが明らかになった。レーリー・テーラー不安定性を押さえるには初期プラズマの一様性が重要であり、放電励起X線レーザーにとって予備放電が非常に重要である理由も明らかになった。
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