FEL共振器中での放射光立ち上がり特性に対する電子ビームミクロパルス幅と放射光波長、スリップ長の関係、電子ビームエネルギー拡がりの影響を解析した。その結果以下のことが明らかになった。RFライナックを用いたFELにおいては、一般に電子ビームマクロパルス幅が、自然放出から発振状態に入るまでの時間よりも長くなければならない。また、ウィグラー中を伝搬する電子ビームからの自然放出光強度は電子ビームミクロパルス中に含まれる電荷量に依存し、電子と光との速度差より生じるスリップ長と同程度かそれ以上のミクロパルス幅が要求される。しかし電子ビームのミクロパルス幅が、共鳴条件より決まる放射光の波長より短い時には、ミクロパルス全体が一つの粒子のように振る舞い電荷量の2乗に比例したコヒーレント自発放射を発するため、ミクロパルスに含まれる電荷量が小さくても、共振器中での放射光強度の立ち上がりが速いパラメーター領域が存在する。この様なパラメーター領域では、発振へ到るまでの相互作用パス回数が少なくて済むので短いマクロパルスでも発振を達成できる。さらに、コヒーレント自発放射光の強度は電子ビームミクロパルスの時間波形にも依存しており、ガウシアンからスクエアパルスに近づくにつれ電子ビーム端面からの放射光強度が強くなり、発振の立ち上がりが速くなる。また、電子ビームミクロパルス幅が放射光波長より短いコヒーレントスタートアップモードの方が、通常のモード(ロングパルスモード)よりも電子ビームエネルギー拡がりの影響を受けにくい。然るに、共振器中の放射光の飽和強度はロングパルスモードの方が高いので、最初は短バンチの電子ミクロパルス列を打ち込み、共振器中で放射光の速い立ち上がりを達成した後に、ロングパルス電子ビームを打ち込み一気にバンチングを起こさせ、飽和放射光強度を達成する新しい発振スキームが考えられる。
|