本研究では、核融合実験装置で使用されるプラズマ対向壁材料として、炭素系材料と高融合金属(タングステン、モリブデン)をとりあげ、核融合炉水素リサイクリング挙動解明の基礎データとなる高温での水素保持(リテンション)の測定を行った。また、この挙動に関する材料の構造との相関を調べるにあたり、粉末X線回析を中心とした材料のキャラクタリゼーションを行った、水素保持の測定では、1000℃程度の高温で、気相の水素から材料中への吸収を調べ、炭素材料では、その銘柄(製造会社)毎に大きな差違があることを見出した。同時に行った日本原子力研究所材料試験炉(JMTR)での中性子照射では、これらの試料で照射後に最大50倍の水素保持量を示すなど大きな変化が起こることがわかった。X線回析によれば、中性子照射した炭素材料では、照射による結晶のc軸方向への伸びに加えて結晶子サイズ(主としてa軸平行方向)が著しく減少することが確認され、結晶子の外周部面積の増大と水素保持量に良い相関があることがつきとめられた。以上のことより、炭素系材料における材料構造と水素保持量の関係が明らかとなり、将来のD-T反応で生じる14MeV中性子によって水素保持量、リサイクリング率が増大することが予想され、これらのシミュレーションを行うことができた。また、高融点金属の場合、単体の金属では水素保持量が少ないのに対して、炭素による表面汚染があれば保持量が増大することがわかり、このような炭素の効果を詳しく調べておく必要性のあることが改めて確認された。これらの成果は、隔年で開催されている核融合炉材料国際会議等において発表を行っている。
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